13.株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶事由





【中間試案】
株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶事由
株主名簿及び新株予約権原簿の閲覧等の請求の拒絶事由のうち,「請求者 が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み,又はこれに 従事するものであるとき。」(会社法第125条第3項第3号及び第252 条第3項第3号)を削除するものとする。
(注) 会社法第125条第3項第1号及び第2号並びに第252条第3項第1号及 び第2号の文言を見直すかどうかについては,なお検討する。





【意見】
提案については賛成。
さらに、以下の追加修正を提案する。
1)法125条3項2号は目的を問わないこととする。
2)その他の閲覧等請求権(議事録等)についても拒否事由を追加する。
3)閲覧等により入手した情報の守秘義務を追加する。

【理由】
1)法125条3項3号は、現状では、拒否が広く認められ過ぎ、委任状勧誘等正当な目的での請求にも支障が生じかねない傾向があるため、修正に賛成。
また、同2号は、逆に狭過ぎる(部会では同1号と併せて「不当に広」いとされているが、1号と2号は分離して議論すべきである)。目的ではなく業務の遂行の妨害・株主共同利益への害という客観的規定になっていないと実質的に拒否事由として働かない。
2)議事録等の閲覧については拒否事由がない。裁判所の許可が必要な取締役会議事録等を除き、情報保護の必要性は比較的小さいが、閲覧権を会社に圧力をかけるために利用するなど濫用の危険がある(そうでなくても長時間の居座りなどにより業務の害となる)ため、閲覧拒否事由を法定すべきである。
3)会計帳簿・株主名簿・取締役会議事録を含め、株主が入手した情報には守秘義務が法定されていないのは問題であり、対処が必要である。

【説明】
閲覧請求権が株主と債権者に限定して付与されているのは、一定の保護管理が必要な情報だからである。
当該保護の実効性を確保するため、根拠となる規定を設けるよう提案するものである。
特に、閲覧等により入手した情報の守秘義務は重要である。
株主が独自の判断で「株主としての権利行使に必要」「株主共同の利益に資する」などとして入手情報をインターネット等で公開すれば、会社には回復不能な損害が発生する可能性がある。 その点に関するダスキン取締役会議事録に係る判例---平成17.10.25大阪高裁平成17年(ネ)第1300号---では信義則に依拠しており、根拠として苦しい(被告の弁護を担当した壇弁護士も、そのブログで、「それにしても、「信義則違反」かぁ。そんなの聞いてねぇよ。」と語っておられる)。
また、株主名簿については、流出すれば個人情報保護の問題も大きい。
なお、私は、債権者である地位を利用し、「研究のため」という理由を以て会社の定款の閲覧を請求し、それに基づき論文を書いて発表した大学教授(著名な商法学者)を知っている。そのような目的の閲覧請求でも、不当とは言い切れない以上、現状は受容せざるを得ないのである。




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